スキーも出来るし、車もバイクも乗れる。ハングも飛べるしパラも少しできる。
自転車にも乗れる。
でも子供の頃から泳ぎができない。
大阪に引っ越した時、1度だけプールの授業があった。
泳げないし、水に入りたくもなかったのでプルーサイドで友達と話をしていたら、
通りかかった先生が「なんだお前泳げないのか?」と言うので、泳げないというのが
いやだったので、「いいえ」と言った。
すると先生が「じゃあ、そこから飛び込んでみろ」と言った。
私はプールサイドから思い切り飛び込んだ。そして潜水したまま反対側までなんとかたどり着き、
水面から先生に手を振った。先生はきっと泳げると思っただろう。
その時は自分が泳げないことは公言していた。だから島一周のサイクリング競争には参加した。
しかし目的は海なので、当然海で泳ぐことになった。
穏やかな海でボートを浮かべて皆はその周りで泳いでいた。
私もボートにつかまって水につかったりしていた。
ボートの上から海底を見ると白い砂と、岩と、小さな魚が泳いでいるのが見えた。
海底までは何メートルくらいだったろう。
たぶんそんなに深くない、せいぜい5メートルくらいだったろうか。
その時誰か一緒にボートにいたと思う。それが誰だったかずっと忘れていた。
私はあの海底まで行って、あそこの石を持ってこようと思いついた。
ボートからゆっくり水に入って、頭から思いっきり潜った。
なかなか体が沈まなかった。息はどのくらい続くだろう?と考えていた。
なんとか海底に近づき、思いっきり手を伸ばして小石を握った。
それから頭を上にして海面を見た。
それはすごくきれいな眺めだった。
海面に太陽の光が反射してキラキラしていた。
あんなにきれいな眺めは見たことがなかった。
それからがむしゃらに海面に向かった。
頭が海面に出たときに周りを見たが、ボートはちょっと遠くにあった。
どうやってボートまで行ったのか覚えていない。
でも誰か女の子が「こっちこっち」と言いながら、
手を差し伸べてくれたのを覚えている。