今まさに父が死んだ年齢なわけだけれど、
父はいったいどんなだったんだろう?と考える。
父は私のことをどう思っていたのだろう?
父が兄を信頼していたのは良くわかる。
母は私と仲が良く、兄とはあんまり中が良くなかったように思う。
そもそもの原因は私がいい加減な人間だったからだと思う。
何をするにも。
父は一度、父も若い頃は私のようだったと語ったことがあった。
一度だけだ。
でも私の知る父は私とは大違いで、生真面目で几帳面だった。
だから銀行員が務まったのだと思う。
今の私はまるでガキだ。
何ひとつまともじゃない。
私のやっている仕事が昔雑誌などで紹介されたことがあったけれど、
はったりだ。
それを見て父は少し自慢げだったようだ。
ということを母から聞いた。
だけど私がやってきた仕事はほとんどはったりだ。
その時代の先端だったから誰もやっていなかったというだけだ。
皆私を援助してくれた。
まるで夢のようだった。
でもいつまでもそうもいかなかった。
いかさま野郎だ。
一人でやるには限界があった。
父は人づきあいがうまかった。
父を慕っていた人は大勢いた。
私を慕ってくれた人は数えるくらいだ。
右手の半分で済む
父は自分の人生を満足していただろうか?
最後の頃、病室でふたりだけの時があった。
私は暇だからスケッチブックに寝ている父の姿を
鉛筆で描いていた。
書きあがったものを父に見せた。
父は「もう今日はいいぞ、あとは看護婦がやってくれる」
と言い、私は病室を後にした。
あれがまともな父を見た最後だった。
それから脳に転移してまともな状態ではなくなった。
私はどうだろう?
息子を前にすると彼には敵わないと実感する。
息子は立派だ。
とてもうれしい。
だけど彼にとって父(私)はどうなんだろう?
今度会うことになっている。
その時に息子に言おうと思う。
「お前は立派になった」と
