1970年代のことだけれど、デジタル録音が出てきた頃あまり真剣に実用化を
考えていなかったように思う。ただしSONYとかビクターとかの技術者を除いて。
我々一般はそんなものが普及するとは思っていなかった。
当時のメモリーなんか12ビットのステレオ音の10分間を一時的でさえ保存しておく
メモリーが無かったのだから。
それにやはり当時はまだアナログ音の方が格段に良いとされていたから。
それはたぶん写真の世界でも同じだったと思う。
デジタルカメラが出てくるのはもう10年以上後だけれど。
しかしその頃アメリカでは既にデジタル化が進んでいた。
1978年に見学に行ったアメリカの音響工場ではデジタルの音響機器、
特にスタジオ用途のもの、が実用になっていた。
CDのレコードが出たのが1982年だったと思う。
もうアナログレコードはだめだろうな、という予感はあったけれど、実際には
ビニルレコードはまだその後もけっこう続いていた。
それよりもオーディオファンはCDの音は良くないという風潮だった。
まだビニルレコードやオープンテープの方が音がいいと言うのが一般通説だった。
だけどCDとオープンテープの音を聞き分けられる人は居ないと思う。
CDもまだ当時はオープンテープに録音された音から作っていたのだから。
今でもまだアナログレコードの方が音が良いという説が流通しているのは
驚くべきことだ。
さらに言えば真空管アンプの方が音がいいとかいうこともある。
真空管アンプの音は聞きやすいが決して良い音ではない。
元の音が真空管の応答の悪さで柔らかくなっているからにすぎない。
マウスが出た時のことを覚えている。
パソコン関連の仕事をしていたのでマウスはかなり早くサンプルを手にした。
他の技術屋と話をしたが「こんなもの使えないな」という意見が多かった。
当時アップルコンピュータを使っていた人にしてそうだった。
しかしマウスはその後驚くべき速さで浸透していった。
それからさらに10年後くらいに、QRコードの試作を見た事があった。
あれはたぶんそれを開発した会社の人が持ってきたのだと思う。
やはり他の技術屋と話したけれど「こなんなもんも使えないな」と言っていた。
その当時は画像解析に使えるCPUも遅かったから、あのドットを解析
するだけの能力が無かった。
実際QRコードが実用になるのはさらに10年以上後だったと思う。
同じ頃だろうかブルートゥースの話が入ってきた。その当時はリモコンも
赤外通信だった。音も赤外か電波だった。ほぼ1対1の危機対応だった。
その時の技術者と話をして「こんなの使えないな」と言っていた。
ブルートゥースはその後ある程度使われていたけれど、今みたいに広く
使われるようになったのは少し後だったように思う。
ああ、USBがあった。
USBが出た時は便利だと思った。それ以前のRS232C,GPIB,HPIB,SCASIにくらべたら
接続の面倒くささが無かったから。でもUSBはその後の外部インターフェイスを
大きく変えることになった。
パラレルのインターフェイスなんかはデータをそのまま扱えたからIOを
作るのも楽だった。
しかしUSBはそれとはまったく異なるインターフェイスだった。だから
単純な8ビットの出力を作るにもUSBをどうするかから考えないといけなかった。
今ではパラレルの5V出力を出すのにUSBのアダプターを使えばいい。
そういうもの全てが今では中国製だけれど、ちょっと前までは
中国製はダメだという人が多かった。でも今では中国製の方が
優れているというのが現状だろう。
時代は変わるものだとつくづく思う。
1980年代のことだけれど、