まだ若かった頃から海の見える家に住むのが夢だった。
それは本当に夢だったのでいつかそんな家に住めたらいいと思っていた。
その頃のイメージは伊豆か静岡の太平洋に面した丘か山の中腹に
家があって遠くに海が見えるイメージだった。
決して海のそばではなかった。
少し離れて見る感じだった。
そのイメージ。
三鷹に住んでいた頃は海などどこにも無かった。
それから少しだけ大阪の高槻に引っ越した。
高槻も海には程遠いところだった。
また三鷹に戻ってしばらくは三鷹だった。
社会人になって札幌に住んだけれど海までは車で小一時間かかった。
時々石狩の海を見に行った。
それからこっちに戻って市川市の浦安に住んだ。
まあ、海は近かったけれどわざわざ見に行くような海ではなかった。
それから東京に移って深川に住んだ。
深川は隅田川はすぐそばだったけれど水は見えなかった。
海は東京湾。
その頃はまだお台場も無くビッグサイトのあたりは広大な
舗装された整地だった。オートバイの練習場だった。
でも海は見えなかった。
それから横浜の港南区に住んだ。
港南区から海はすごく遠い。
むしろ山だった。
それから同じ横浜市の都筑区に住んだ。
都筑も海には程遠い。
近くに川はあったけれどどぶ川みたいな川だった。
そこに長く住んで、今の横須賀に引っ越した。
都筑が駅から歩いて5分の場所だったのに比べると
ものすごく田舎だ。
もう比較にならないくらい田舎だ。
先日ついに京浜急行の乗降客が最低の駅なため
無人駅になってしまった。
駅前にはスーパーが1軒と小さなレストランが1軒だけの駅だ。
そこからエレベータで上に登って、さらに坂を登って行くと
やっとうちのマンションに着く。
そこからは海が見える。
私の部屋の窓から遠くに海が見える。
まるでかつて夢に見た海のイメージだ。
不思議だ。