1979年頃だったと思うが、私はまだオーディオ業界で働いていた。
私がいた会社はレコードに関係した製品を作っていた。
その年のオーディオフェア、確か晴海だったと思うけれど、流通センターだったかもしれない、
に札幌から説明員として行っていた。
実際に説明していたのはベテランの営業の人や技術の人だった。だから私はそれほど
緊張も焦ることも無くその場にいたと思う。
休憩時間には自由に歩き回ることができたので、他のブースを見て回った。
全てのオーディオ機器の表示装置が変わっているのに気がついた。
その年より以前からそうだったと思うけれど、その時はそれがすごく気になった。
オープンリールテープデッキもまだ出展されていたが、表示はアナログメータでは
なく、デジタル表示だった。カセットデッキもそうだった。
さらにアンプやチューナーのボリューム調整などもアナログの可変抵抗器ではなく、
カチカチとクリック感のあるつまみだった。
つまり全てがデジタル化の方向になっていた。
一番人だかりのあったブースは(私の記憶では)SONYのブースだった。
そこの壁にはキラキラと虹色に輝くCDが飾られていた。
またその一角では実際にCDの音を出して聞かせていた。
私はその壁に飾られていたキラキラ光るものを欲しいと思った。
音はどうでもよかった。ただそのキラキラ光る板が欲しかった。
私はもう一人の社員の人と一緒に話しながら歩いていた。そのCDを見ながら
その人が「まだまだCD化されるレコードは少ないから、売れないね」と言っていた
のを覚えている。
でもそれから全てがCDになるのはあっと言う間だった。
でも音はどうだったろう。
そんなに安物ではないCDデッキで聞いていたけれど、「すごくいい音」という
感じはしなかった。初期のCD録音、CDデッキはビット数も少なく、サンプリング
それほど高いものではなかったと思う。でもたぶん20KHzはクリアーしていた
と思う。CDの音をいい音だとは思わなかった。
有名メーカーのCDデッキで、明らかにデジタル音のするものがあった。
サンプリング数が明らかに少ない感じだった。
そういえば、いつから「1ビット」AD/DAになったのだろう?
あの録音再生方式はマイコン初期のTK80でやっていたデルタ・シグマ変換だ。