7/16/2022

仙台までは

 独り言。読むには値しない

毎年札幌から東京に帰っていた。
車で。
約1000キロ。
東北道もまだ無かった。
東京へ戻る時はまだ良かった。
延々と国道を走っていても気楽だった。
野辺地でフェリーを降り青森から盛岡を過ぎ
仙台を過ぎると気分はもう東京に帰っていた。
ほんとうに東京まですぐだった。

そのうち岩槻から仙台まで東北自動車道ができた。
いやその前は矢板までだったけれど。
仙台から東京まではとても近くなった。
札幌から東京まではほんとに近くなった気がした。
少なくとも東京に戻る時は。

三鷹から岩槻までの都内の道は最悪だった。
いつもほとんど渋滞していた。
やっとのことで岩槻にたどり着き高速に乗った。
高速に乗ったら仙台まではすぐのはずだ。
だって仙台から東京まではあっという間だったから。

だけど仙台はなかなかたどり着けなかった。
遠かった。
郡山、福島を過ぎ仙台までの道は遠かった。

仙台からは一般国道4号線だった。
盛岡から野辺地に行く前に金田一温泉で
道は大きく左にカーブしたように思う。
そのカーブのところの町をよく覚えている。
やっと金田一だ、と思った。

金田一を過ぎれば野辺地を目指すだけ。
野辺地は夜中だ。
吹雪の時も多い。
雪の中、車検証を持って事務所で乗船を申し込む。
そして車に戻り乗船の列に並ぶ。
吹雪の中乗用車が10台くらい並び、
車の黄色いライトが列になっている。
乗船まで1時間待つこともあるし2時間のこともある。
待っていても欠航になることもある。
吹雪の中ライトを持った係りの人が回ってくる。
乗船場に向かうように言われる。
(タイヤはどうした? ずっとスパイクのままだったのだろうか?)

フェリーの乗船のための鉄板をスパイクタイヤがかじる音
が耳に残っている。
フェリーに乗ったら4時間寝ているだけだ。
函館に着くまでのしばらくの間だ。


函館に着く前に目がさめる。
しばらくデッキで外を見ている。
着岸する少し前に車に乗り込みエンジンをかける。
車の周りでは作業員の人が車にかけたロープや鎖を
外して回っている。
ゴンゴンと船底をたたくような音が響く。
着岸して車両甲板の大きな扉が開くと外が見えるようになる。
先頭の車両から順番に出るように指示される。
カチカチとスパイクの音を立てながら外へ向かう。
港のコンクリートに降りるとそのまま港の外に向かう車の
後を追って走る。

そこから札幌まで250キロ。
退屈な道をただ走る。
あれはいったいどこへ向かっていたんだろう?