8/04/2019

有明埠頭の夏

そうだった、夏のバイクだ。
夏はこんなに暑くなかったと思う。

バイクの中型免許をとって、巣鴨でバイクを買って、アパートのところまで
運んでもらって、それから練習だった。
深川のアパートから海の方(南)にまっすぐ走って行くと埋め立て地だった。
そこまでも今のようにビルは建っていなかったけれど、
埋め立て地にはビッグサイトも無かったから、更地だった。

なぜかだいたいの区画ができていて道路だけはきちんと舗装されていた。
そうなるとそこで走ろうと思うのがいるわけで、私もその一人だった。
どうも記憶が定かでないけれど、ビッグサイトの方はまだ無かったか、
立ち入り禁止のバリケードがあったように思う。
今フェリー乗り場がある有明ふ頭の方は入れた。確かバリケードに隙間が
あってそこから入れた。
(あるいは逆にビッグサイト側だったかもしれないけど)

とにかく広い教習所のように何も無い更地に道路だけがあった。
いつも数台のバイクが練習していた。
練習していたというのは、スピードを出して走り廻っている人は
ほとんど居なかったから。
バイクをものすごくねかせて限界で曲がるとか、スラロームとかの
練習にはうってつけだった。

時々白バイの警官も走っているという話だったけれど、
私は見たことが無かった。
何度か行くといつも同じ人に会うわけで、高校生ぐらいの若い人も
走っていた。いつだったか125のバイクに乗った高校生らしい人に
話しかけられた。「いつも会いますね」とかそういう言葉だったと思う。
青い色のオフロードだったと思う。
私は250だったけれどアメリカンでちょっと大きく見えたからか、
「すごいですね」とか言ってた。
フルフェイスのバイザーを上げた時の彼の目が眩しそうだったのを覚えている。
それから何度かそこで会うことがあった。

そのうちバリが強化されてそこには入れなくなってしまった。
そういえばそこの練習場からは草地の向こうの方に「船の科学館」が見えた。
フジテレビはまだ無かった。
その頃からお台場周辺がにぎやかになって行ったのだと思う。

あれはバイクの夏だった。