12/15/2013

星のカーテン

神代高校には地学の先生で羽鳥先生という先生がいらっしゃった。
関東ローム層の権威だった。
その先生の授業は当時としてはとてもユニークで授業の大半はスライドを映しながら
真っ暗な教室で行われた。生徒達は予め手元を見ずにノートをとる方法を練習させられた。
そのためノートはとても大きく乱れた文字で埋め尽くされた。
 
その先生の授業で最も感動したのは星の話だった。
『ではみなさん、さういふふうに川だと云はれたり、乳の流れたあとだと云はれたりしてゐた・・・』
というのは宮沢賢治だけれど、まさにそういう感じだった。
 
先生はスライドで沢山の星の中に浮かんだ星雲の写真をスクリーンに映した。
私はそのままこの「星雲は星達の中に浮かんでいる」とずっと思っていた。
しかし先生は
「この周りの星達は言わば私たちの住む銀河のカーテンです。」と言った。
「私たちはカーテン越しに星雲を見ているんです。星雲の周りには何もありません。」
 
           
 
先生がそう説明された瞬間に私はその何も無い宇宙の中で星雲を見ている気がした。
あの感動は今でも忘れない。
真っ暗な教室が宇宙に変わった瞬間だった。
高校生の頃にあの感動をくれた羽鳥先生に感謝したい。