5/29/2024

風の又三郎(1940)

 さっき「白い蒸気機関車」のことを書いてから、
Amazonから「風の又三郎」を推薦された。
そんなに人の検索を覗き込んでいるのだろうか?
やってるかもしれないな、と思う。

それはともかく観ろというので見た。
これを全編見るのは3度目くらいだけれど、
すっかり内容を忘れていたことに気が付いた。
だいたい1時間半もある。
途中かなり冗長なシーンがあることがわかった。
あるいはああいうシーンは必要だったのかもしれないが。
映像も今となってはあまり綺麗ではない。
綺麗ではないのだけどその分昔の雰囲気が出ている。

又三郎は5年生だったのを知った。
私が初めて転校したのも5年生だった。
転校生は特別な目で見られた。
また転校した自分も新しい学校はとても不安だ。
だいたいまだ何も世間のことを知らず
幽霊も信じていたような頃だから、
何が起きるかわからない。

風の又三郎という話は又三郎以外の子どもたちの
話であり、又三郎自身の心情はあまり語られていないように思う。
いや、又三郎自身の気持ちを表現した記述は無いように思う。
タバコの葉のシーンだって、本来の賢治の書き方なら
 「三郎はにわかに心配になりました
  しかしそれを皆に悟られまいと
  怒ったように『知らないで取ったんだい』
  と言いました。
みたいに書いていたように思う。
しかし三郎は発言は書かれているけれど、
その時の心情は全く書かれていない。
それは三郎が得体の知れない転校生であることを
読者にわからせるためなのだろう。

「風の又三郎」という話の主人公は三郎ではなく
嘉助を主人公とした話なのだと思う。
話を読んだあとで心に残るのは嘉助の
又三郎にもう一度会いたいという気持ちだ。