人の話で最もつまらないのが夢の話だ、とよく言われる。
でも私は夢の話が好きだ。
とても印象的な夢はいくつか覚えている。
その中でも一番よく覚えている夢のことを書こう。
私がハンググライダーを始めたのは42歳の時だった。
それよりも数年前のある日夢を見た。
私は小高い丘の上に立っていて、なだらかな背の高い草で覆われた斜面が
目の前に広がっていた。
その斜面はずっと先の方まで続いていてその先は見えないくらいだった。
草は濃い緑色で風になびいていた。
私は「よし行こう!」と言って、その斜面を走り始めた。
しばらく走ると自分が地上から2メートルくらいのところを滑空しているのがわかった。
そのままとても早いスピードで斜面を降りて行った。
自分の顔にあたる風がとてもリアルに感じられた。
私は身体を前傾させてもっとスピードを出そうとした。
「もっと!」と思った時に目が醒めた。
その夢はずっと忘れることなく覚えていた。
ハングを始めたのはその夢のせいではない。
しかし最初に練習を始めたスクールにある丘の斜面には緑色の草が生い茂り、
丘からハングを担いで駆け下りると、まるであの夢の中のシーンのようだった。
ある夏の暑い日に練習していて、草原に向かって滑空しているとき、
あの夢は正夢だったのだと確信した。
もう一度見てみたいが、その後二度と見ていない。