6/29/2015

三井君のことπのこと


三井君という人がいた。彼はいつも全教科クラスでトップだったと思う。
私はほとんどの教科はあまり良くない成績だったけれど、物理と数学だけは
1度だけ彼を超えたことがあった。私がクラスでトップになったのはたぶん
その時だけだ。
三井君の家は私の家から少し離れていたけれど、団地に住んでいた。
学校が終わっていつも彼の団地の階段の踊り場で話をした。
だいたいが物理の話だったけれど、何時間も立ったまま話をした。
いつだったか、学校で誰かが「πは7分の22で求まる」と言ったのを
私も三井君も聞いていた。
それで私が「それで求まるのは3桁だけだよねぇ?」「そういえばπって
どうやって計算するんだろう?」と三井君に聞いた。
三井君は確かルート2を使った計算式を言ったけれど、それも確か3桁だった。
それで、じゃあどうやれば100桁以上出せるか考えよう、ということになって
ふたりでそれぞれ、ずいぶん考えた。
本屋に行って計算式を調べたりした。
しかし、二人とも結局計算式は出せなかった。
私も三井君も級数計算の方法を勉強しないと出せない、という結論になった。
確か、級数計算の式をどこかから見つけてきて、2,3桁だけ計算したような
記憶がある。
三井君とは相対論とかについても話した。
と言ってもそこらへんの本に書いてあるような話だけれど、三井君は私よりも
ずっと本当のことを知っているような気がしていた。
三井君のお父さんは確か大学の先生だった。たぶん三井君も立派な人に
なっていると思う。今会えたら、今度は量子について話したい。
きっと彼は私のわからないことをきちんと説明してくれるだろう。