小学校6年の時だ。
僕は大阪から三鷹に戻って入った学校が三鷹第7小学校だった。
前は6小だった。
6小と7小は雰囲気がものすごく違った。
そういう時代だったのかもしれないけど、大阪がものすごく田舎で
何もかも古臭くて人々も泥臭い感じだった(当時は)のに比べると
7小は都会の学校のような気がした。
僕は転校生だった。
クラスの他の人は皆下から上がってきた子だからみな仲が良かった。
僕は別に女の子には興味が無かった。
というか女の子という存在が「女性」というものと結びついていなかった。
つまり、男女の仲というのを知らなかった。
知ってる女の子はみな友達だったから。
それで、そのクラス(6年1組だったかな?)にも慣れてきた頃、
同じクラスのちょっと背の高い女子に安部さんという子がいた。
声はちょっと低く、今考えると美人タイプではなかった。
個性的な整った顔つきだった。
ある授業で僕らは一番後ろの方だった。
それである授業の時に、ふと横を見たら彼女と目が合った。
彼女はちょっと笑ってまた前を向いてしまった。
「あれ?何で笑ったんだろう?」と思った。
そんなことがあってから、時々目が合って、僕も笑い返すようになった。
先生にはわからないように。
そんな頃、体育の授業でドッジボールをやった。
僕と彼女は別のグループだった。
僕はあまり得意じゃなかったからやる気がなかった。
適当にやっていたらボールが飛んで来た。
僕はそれを胸で受けてすぐに相手に返そうと思った。
僕にボールを投げたのはその安部さんだった。
僕は彼女に向かってボールを投げたら、
彼女はそれをうまく受けてまた僕に返してきた。
彼女は少し顔が赤かった。
何度も繰り返すもので、他の皆がはやし始めた。
僕はすごく恥ずかしくなって、ボールを落としてしまった。
コートの外に出て、見ていた。
なんだか変な気持ちだった。
ドキドキしていた。
たぶんそれが初恋だったと思う。
僕のその頃の親友だった石倉も彼女が好きだと言っていた。
安部さんは優等生だった。石倉も頭が良くてスポーツマンだった。
夏休みが終わるころから、僕は精神的にすごく不安定になっていて、
思いもしないことを突然したり、人から嫌われることを言ったりし始めた。
自分でもなぜそうなったのかわからない。
別な自分が勝手に授業中に怒ったり、友達にひどいことを言っていた。
それでだんだんクラスの皆も僕から遠ざかってしまった。
一人だけ、岩本君って言ったかな、彼は僕の友達でいてくれた。
よく一緒に話をした。
左は近藤君だ。
そんなわけで安部さんはそれっきりどうなったのかも知らない。
卒業してからも街で会ったことは無い。
確か彼女のお父さんはどこかの大学の偉い人だったと思う。
彼女の名前は広子さんて言った。