8/09/2017

記憶喪失

これを書いたかどうか忘れた。
これは記憶喪失か?
ま、いいか。

高校3年の時だった。
体育の時間はたいていハンドボールだった。
だいたい球技は苦手できらいだった。
ゴールポストの手前に立って、秋山のジャンプシュートを防ごうとした。
それは覚えていた。でもその前のことは思い出せない。
その後のことはだいぶ後になって思い出した。

私は秋山に倒されて後頭部を地面にぶつけたようだ。
痛みは全く無かったが、ジンジンしていた。
その直前まで眠っていて突然起こされたような気がした。
だからなぜそこにいるのかが理解できなかった。
しばらくコートの外で立っていた。
私は景色を見渡していた。
一人の同級生が「お前大丈夫?」ときいてきた。
そいつも一度記憶喪失になったことがあるゴールキーパーだった。
大丈夫かどうかわからなかった。
そいつは自分の経験から気が付いたのだろう。
先生に「ちょっと保健室に連れて行きます」と言って
私の腕をとって歩き出した。
そこから保健室に歩いて行く時に気がついたのは
少し前のことをどんどん忘れて行くことだった。

図書館の前を通り過ぎる時には自分がハンドボールをしていたことも、
コート脇に立っていたことも忘れて行った。
結局保健室に着いた時には自分がどこからそこに行ったのか
わからなかった。
連れて行ってくれた友人が保険の先生に、「こいつ記憶喪失ですよ」
と言うと、先生は「大丈夫だと思うけれど、様子を見ましょう」
と言っていた。
それからベッドに横になって天井を見ていた。
誰か他の生徒が気分が悪いとかで入ってきた。

そこまでは、ベッドに横になっていた時は全く覚えていなかった。
その後半日くらいしてから徐々に思い出した。

途中その連れてきてくれた友人が「大丈夫?怖くない?」と聞いてきた。
彼は自分が記憶喪失になった時、わけがわからなくて怖かったそうだ。
私は別に怖くは無かった。
そのうち治るだろうと思っていた。
楽天的な性格が効いたのだろう。

その後は記憶を失うことはなかった。
でもハンドボールで倒れる以前のことはもう思い出すことがきなかった。
それがいつまでだったのか、わからない。
1日分なのか数日分なのかもっと長い間の記憶を失ったのか
今となってはわからない。