これを書いたかどうか忘れた。
これは記憶喪失か?
ま、いいか。
高校3年の時だった。
体育の時間はたいていハンドボールだった。
だいたい球技は苦手できらいだった。
ゴールポストの手前に立って、秋山のジャンプシュートを防ごうとした。
それは覚えていた。でもその前のことは思い出せない。
その後のことはだいぶ後になって思い出した。
私は秋山に倒されて後頭部を地面にぶつけたようだ。
痛みは全く無かったが、ジンジンしていた。
その直前まで眠っていて突然起こされたような気がした。
だからなぜそこにいるのかが理解できなかった。
しばらくコートの外で立っていた。
私は景色を見渡していた。
一人の同級生が「お前大丈夫?」ときいてきた。
そいつも一度記憶喪失になったことがあるゴールキーパーだった。
大丈夫かどうかわからなかった。
そいつは自分の経験から気が付いたのだろう。
先生に「ちょっと保健室に連れて行きます」と言って
私の腕をとって歩き出した。
そこから保健室に歩いて行く時に気がついたのは
少し前のことをどんどん忘れて行くことだった。
図書館の前を通り過ぎる時には自分がハンドボールをしていたことも、
コート脇に立っていたことも忘れて行った。
結局保健室に着いた時には自分がどこからそこに行ったのか
わからなかった。
連れて行ってくれた友人が保険の先生に、「こいつ記憶喪失ですよ」
と言うと、先生は「大丈夫だと思うけれど、様子を見ましょう」
と言っていた。
それからベッドに横になって天井を見ていた。
誰か他の生徒が気分が悪いとかで入ってきた。
そこまでは、ベッドに横になっていた時は全く覚えていなかった。
その後半日くらいしてから徐々に思い出した。
途中その連れてきてくれた友人が「大丈夫?怖くない?」と聞いてきた。
彼は自分が記憶喪失になった時、わけがわからなくて怖かったそうだ。
私は別に怖くは無かった。
そのうち治るだろうと思っていた。
楽天的な性格が効いたのだろう。
その後は記憶を失うことはなかった。
でもハンドボールで倒れる以前のことはもう思い出すことがきなかった。
それがいつまでだったのか、わからない。
1日分なのか数日分なのかもっと長い間の記憶を失ったのか
今となってはわからない。