子供の自然学習について行ったことがある。
群馬県の方のブナやミズナラの森の中で過ごすというものだった。
森の中を歩く途中、先生が聴診器を持っていて、それを木の幹にあてて、樹液流の音
を子供達に聞かせていた。
私はその時は、聞いてみなかった。聞いているこども達の反応は微妙だった。
それから10値年以上経って、近所に大きな公園があるのでそこの木では樹液流の音
は聞こえるだろうか?と思った。
聴診器は無かったので小さなマイクロフォンで録ってみようと思った。
初夏だったが、出来るだけ大きな広葉樹を探してその幹で調べてみることにした。
他のところに書いたけれど、街自体がかなり大きな騒音を持っているので、単にマイクを
近づけても街の騒音を録るだけだ。
そこで粘土を用意してマイクを木に貼り付けるように粘土を盛り上げ、外の音が聞こえない
ようにした。
それで外の音はほとんど聞こえなくなった。
いざ録音してみると、木もたくさんの音を持っていることがわかった。
風が梢を揺らす音。木自体がきしむ音、小枝同士がこすれあう音などだ。
樹液流と思われる音は全く聞こえてこなかった。
ひょっとするとその木がブナではなかったのかもしれない。
しかし、広葉樹は大体同じじゃないだろうか? と思うが。
他の木でも試してみたが、大体同じような音だった。
思うに、樹液流の音というのは本当にあるのだろうか?
ほんとうには無いのかもしれない。
しかし、聴診器を木にあてて耳をすませて木の音を聴くというのはいいと思う。
本当には聞こえないのかもしれないが、木の生命の音が聞こえるかもしれない
というのは、考えるだけでも楽しくなる。
それに、木の音を実際に聴いてみると、思ったよりもたくさんの音が木に伝わっているのが
わかった。
木のそばを人が歩く振動も結構大きく幹に伝わっている。
木をたたけばものすごく大きな音が伝わっている。
そういう音も風の音も木は聴いている。
木は世界のことをほんとうはよく知っているのかもしれない。