長かった囚人生活もやっと終わる。
この病室は四人部屋だ。
私は窓側。
入り口の左側に85歳の男の人。
その人はとても静か。
だけど夜中に毎晩看護師さんが来る。
よくわからないけど、聞こえて来る声を聞いていると
オムツが溢れてしまうようだ。
それでシーツを変えたり着替えたりしているようだ。
毎日だからなんとかならないかと思うけど。
どこが悪いのかはわからない。
私の向かい側の窓側の人も80半ばくらいだろうか。
この人は何をするにもうるさい。
カーテンの開け閉めとかゆっくりやればしずかなのに、
食べる時がまたうるさい。
すする音や食べる音ゲップ、みんなうるさい。
それを5日間聞いてきた。
最初は閉口した。「音出すなよ!」と思っていた。
今日になって分かったのだけど、
彼は歩くのが不自由のようだ。
何の病気かわからないけど、呼吸器系に問題があるのかもしれない。
あんな風に息をしながら食べるのには理由があるのだろう。
彼は眠るととても静かだ。
私のとなりに昨日入ってきた偉そうなおっさんのいびきに比べたら
死んでるように静かだ。
その静かな人が昨日夜中に寝言と歌を歌い始めて驚いた。
何の歌かはわからなかったけれど
はっきりとしたメロディーで歌っていた。
寝ながらあんなにしっかり歌えるのだろうか?
その人たちとも今日でお別れだ。
もう二度と会うこともないだろう。