今日の昼、出かける二人を玄関に送り出して、
一人だった私はお昼を作っていた。
ふと「あれ、オレオどこ行った?」という気持ちが起きた。
電子レンジにパックを入れたまま探しに行った。
部屋のどこにも居ない。
ひょっとしてと思って玄関ドアーを開けたらそこにいた。
横になってか細い声で鳴いていた。
「おー!どうした?!」と体に触ると濡れていた。
水をかけられたように。
お腹に血が見えた。
あごにも血の塊があった。
オレオが外に出たまま気づかずに他の階の誰かにやられたと思った。
急いで中に入れた。
よろよろと傾いたまま歩いてすぐにまた横になった。
失禁もしているしウンチも出ている。
一見してヤバイと思い、病院に連れて行くことにした。
いつも行く病院に電話した。
するとお昼から夕方までは休診だと言う。
こちらの状況を言ったら、
「連れてきてください」と言ってくれた。
色々準備しているうちにオレオはソファーの下に潜り込んでいた。
引っ張り出してキャリーケースにバスタオルを敷いて
オレオを入れた。
そのまま駐車場に行き、大急ぎで車を出した。
病院は2つ先の駅の近くだ。
そこに着くまでオレオはか細い声で鳴いていた。
もうちょっとで病院、というところで大きな声で2回鳴いた。
到着してすぐに先生のところに連れて行って
キャリーケースを開けた。
でもオレオはもう動いていなかった。
先生が「亡くなっています」と言った。
「えー!どうにかならないですか?!」
「ついさっきまで鳴いていたんですよ!」
と私。
「どうにもなりません」
と先生。
涙と嗚咽が収まってから、状況を説明した。
体が濡れていたこと、血が出ていること、家の外に出ていたので
猫嫌いな人が水をかけて蹴ったりしたんじゃないかと。
先生はその時のことを何度も詳しく聞いてきた。
先生はそれではレントゲンを撮って調べてみましょう。と言った。
レントゲン室に助手の男の人と一緒に、その初老の先生が
オレオを連れて入っていった。
ガラス窓越しに全て見えた。
男の助手の人がオレオを優しくなでていた。
先生は何枚かのレントゲン写真を撮っていた。
撮影を終えてオレオは戻ってきた。
助手の人が優しくキャリーバックに入れてくれた。
それから先生は映した写真をパソコンでしばらく見ていた。
それから「来てください」と私を呼んだ。
色々説明してくれた。
内出血は無いこと。
骨折も無いこと。
肺がつぶれていること。
口元の血の塊は口から吐き出したものだということ。
そして、外から危害を加えられたものではないです、と言った。
「これは肥大性心筋症です」と言った。
猫の病気で一番多い致命的な病気だそうだ。
オレオはまだ1歳だった。
生まれつき持っていた心臓の病気が今出たのだろう。
先生の説明を聞いて、会計を済ませて病院の部屋を出た。
するとその初老の先生も一緒に階段を降りてきて、
階段の下でしばらくその病気のことをまた話してくれた。
それから駆け付けた妻とオレオを車に乗せて家に帰った。
帰りながら先生に言われたことを話した。
妻はずっと号泣していた。
正しい意味で号泣していた。
「でも、誰かにいじめられたんじゃなかったんだよ。
そうじゃなくて良かった。そうだったらあまりに
可哀そうだよ」
と私が言った。
今夜中だけれど、妻は自分の部屋のソファーにオレオを
寝かせて、一緒に寝ている。
私は今日起きたことが信じられず、今でもオレオが居間で
寝ているような気がする。
オレオほど賢く静かでいい子を知らない。