9/23/2016

ノスタルジック渋谷

ねえ、あれはいつだっけ?
渋谷駅前のハチ公前の広場で別れたのは。
まだ交番があったね。
あの後の記憶がはっきりしない。
あの時君は何て言ったの?

あそこで別れたということはそれまでどこに行っていたのだろうか?
なぜだろう、その前まではもっとたくさんの人がいたように思う。
どこかでみんなで集まっていたのかな?

それじゃあ、あれはいつだったろう?
地下の部室だったかな?
学校だったと思うけど、
はっきりしない。
ねえ、あの時は君は何て言ったの?

あの映画は僕は全く観る気がしなかったよ。
でも観て良かった。
あんなにすごい人だとは思わなかったから。
今でもあの映画は思い出せる。
だけど、なぜ君は僕をあの映画に誘ったの?
その映画館はもう無いけれど、
渋谷に行けばあの映画館があるような気がする。

あの地下の喫茶店。
あれももうずいぶん昔に無くなってしまった。
でもあの煙った狭い部屋で、
洪水のような音の中に僕らが居たことは
今でも思い出す。

実はあの後何度かあのお店に行ったんだ。
でも君に会うことは無かった。
じゃあ、なぜ君は僕をあの店に誘ったの?

君のアパートの狭い部屋のコタツで
朝までレコードを聴きながら話をしたね。
空が明るくなる前に
僕は眠ってしまった。
あの部屋ももう無いだろうな。
駅からの道は覚えているけれど
あの部屋まではたどり着けない。

雨の日の野外コンサート
傘の中からステージを眺めていた。
誰かが大声で歌っている時に
君は何か言ったね
よく聞こえなかったけど
あれは何て言ったの?

いつだったか君の家に電話をしたね。
あまり元気がなさそうだったけど
君は僕に聞いたね。
その時僕は何て言ったろう?

全てはまだ何もが始まる前のこと。
ずっとずっと昔、昔のこと。
たぶんあの時が世界が始まる前の
最後の1ページだった。