9/18/2016

友人とクラッシック

問題は同じことを二度書いてしまうことかもしれない。
でもこれはまだ書いていないはず。

高校は都立神代高校という高校だった。
木造のおんぼろ校舎だった。
友人に「カチョウ」と呼ばれている男がいた。
本名は小柳勇志朗と言ったと思う。  字が違うかも。
私はクラスでは一番背が高い方だったが、彼は私よりも2センチくらい大きかった。
並んでバス停まで帰る時、あいつはよく私の肩に手を置いて歩いた。
ちょっと変だったかもしれないが、その時はそんな風には思わなかった。

カチョウもクラシック音楽が好きだった。
よく音楽の話をした。
クラシック音楽の話を気兼ねなくできるのは彼だけだった。
音楽の知識は私の方が詳しかった。
でも彼の方が間違えていても決して譲らなかった。


私は短距離が得意だった。
体育の授業で50mの記録を録る時があった。
私とカチョーは同じグループだった。
ゴールの手前で横を見た時カチョーは少し後ろで顔を上に向けて走っていた。
そのグループでは私が1番だった。
でもカチョウは1番の記録時間を自分の時間と信じていて譲らなかった。
ま、いいかと思って、私は2番目の記録を自分の記録として書いた。

どこかに一緒にオーケストラを聴きに行ったことがあったような気がする。
調布だったか。
その会場がシンナーの匂いが強くて音楽を聴いてる場合ではないほどだった。

カチョーの家に行ったことがあった。
確か多摩川に近い団地の一室だった。
タンスの上でハムスターを飼っていた。
その匂いがたまらなく臭かった。
「気にならないの?」と聞いたら、気にならないと言っていた。

カチョーと付き合わなくなったのは、私が当時同じクラスの女の子と付き合い始めた
からだったのだろう。
私が彼女とバス停まで歩いていると彼は道路の反対側を一人でまっすぐ前を向いて
歩いていた。
そのシーンだけをよく覚えている。

それからずいぶん年月が経ってから、京王線の電車で偶然彼に会った。
全く以前のままの感じだった。
「元気?」とかなんとか言ったように思う。
私が電車を降りるとき「じゃあね」と言うと、
彼も「じゃあ」と言い、
まっすぐ窓の外を見ていた。